京都市立西京高校附属中学

2023年1月23日(月)・2月10日(金)の2日間、京都市立西京高校附属中学で、「特別授業」が開催されました。2005年にはじまった「特別授業」は今年で18回目。1月23日の授業は中学3年生全員が参加。2月10日の授業はそれぞれの授業の希望者が3つの教室に分かれて、講師も生徒もマスクをつけて「特別授業」が行なわれました。

テーマ講師
経済入門大竹文雄・大阪大学教授
人類の経済活動の規模と地球生態系の扶養能力:エコロジカル・フットプリントを使って考えてみよう和田喜彦・同志社大学教授
経済学から見たSDGs上須道徳・大阪大学准教授
「持続可能な社会と私たちの生き方」一方井誠治・武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授

「経済入門」大竹文雄(大阪大学教授)

「社会はこれから先どのようになっていくのだろうか」、という疑問をもったことはありませんか。また、「どうすれば、この社会の中でうまく生きていけるだろうか」という疑問はどうでしょうか。こうした疑問に答えるためには、私たちの社会がどういう仕組みで動いているか、私たち人間はどういう行動をとるのかを理解する必要があります。つまり、経済の考え方を理解することです。この講義はその第一歩です。

<生徒の「感想」から>
自分自身が経験したコロナによる買い占めの話が面白かったです。ああいったことが起こってしまうのは、実際に需要が供給を上回ることからだけではなく、予想の自己実現から起こることもあるというのが印象的でした。

「人類の経済活動の規模と地球生態系の扶養能力:エコロジカル・フットプリントを使って考えてみよう」和田喜彦(同志社大学教授)


世界の経済規模は拡大し続け、エネルギーの使用量や食料の消費量が増加の一途をたどっています。太平洋クロマグロやニホンウナギのように捕り過ぎが原因で資源量が急に減っている魚たちが目立ってきました。「経済活動が活発になることによって地球生態系に負担をかけすぎているのでは?」「今のような行け行けドンドンの経済運営が続いたならば健全な地球生態系は維持できなくなるのでは?」といった疑問をもったことはありませんか。エコロジカル・フットプリントはこうした疑問に科学的に答えるためにつくられた環境負荷のものさしです。

<生徒の「感想」から>
「バイオキャパシティ」のところで、アメリカは地球の4.8個分、日本は2.9個分の生活をしていると知り驚きました。それでも生活が成り立っているのは、地球の誰かが我慢しているということなので、みんなが地球1個分の生活ができるように努力していかなければならないと思いました。

「経済学から見たSDGs」上須道徳(大阪大学准教授)

「経済成長は一人当たりの所得を上昇させ、貧困の解消や豊かな生活を人間社会にもたらしてきました。一方、経済活動の拡大は地球環境問題や資源の枯渇問題を引き起こし、人間社会の存続を脅かすまでになっています。また、経済発展の恩恵からとり残された国や地域、貧困にあえぐ人が存在しています。持続可能な開発(Sustainable Development Goals=SDGs)はこうした背景から生まれた国際的な発展の概念です。本授業ではSDGsにおける重要な概念を、経済学を通して学び、経済発展や経済成長の意味について皆さんと考えてみたいと思います。」

<生徒の「感想」から>
今日のお話の中で一番心に残っているのは桶の話です。例えば、SDGsの17の目標がそれぞれ1枚ずつの板だとして、桶の水は一番低い板までの量しか溜まらないから、まんべんなく高くすること(解決していく)ことが必要なんだというお話は、SDGsだけではなく他のこと(成績とか)にも共通するとおもいました。

「持続可能な社会と私たちの生き方」一方井誠治(武蔵野大学名誉教授、京都大学特任教授)

2018年8月、スウエーデンの15歳の高校生だったグレタ・トゥーンベリさんは、毎週金曜日、スウエーデンの国会議事堂前で、気候危機への対応を求めるただ一人の行動を始めました。彼女は何故、大事な学校の授業を休んでまでそのような行動を起こしたのでしょうか。私たちは普段何気なく「持続可能な社会」とか「持続可能な発展」という言葉を使っていますが、実際の社会は本当に持続可能な方向に進んでいるのでしょうか。

 今回の講義では、最初に「持続可能性」の考え方は、学問的にも人々における理解もいまだ定まっていないこと、きちんとした持続可能性を確保することは意外に難しいこと、SDGsなど世界の取組についてもその実効性についてよく考える必要があること、さらに、持続可能性の確保には、私たち自身が人生において何を自分の幸福と考えるかに関わっていることなどについて解説します。

 また、気候変動問題をはじめとする持続可能な社会に向けた、日本を含めた世界の取組について、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー不足に直面しているドイツの気候変動・エネルギー政策を中心に、日本の政策とも比較しつつ紹介します。また、日本の江戸時代の人々の暮らしやものの考え方が、これからの持続可能な社会づくりへ与えるヒントについても考えたいと思います。

<生徒の「感想」から>
今日まで続く人間の社会を築き、経済を発展させてこられたのは、地球の恵まれた環境があってこそで、事前を破壊することは自分たちの基盤を自分自身の手で突き崩すに等しい行為であるというお話が印象に残りました。